ドリームシナリオ

 春は死にたくなるから嫌いだ。

 今年ももれなくメンタル不調で寝込んでいる。1日15時間くらい寝ても倦怠感が消えず、些細なことで死にたくなっている。

 半年くらい辞めていた睡眠薬をまた飲むようになった。この薬は副作用に悪夢があるらしく、夢をよく見るようになる。色彩豊かな感情を伴った激しい夢だ。すごく生々しい夢なので、後から思い出した時に現実か夢かの区別があまりつかない。

 最近、「ドリームシナリオ」という映画を見た。ニコラス・ケイジ演じる平凡な男が色々な人の夢の中に出てくるようになり、一躍有名になるが、人々が見る夢が悪夢に変化するようになり…という話だ。

 映画の中のニコラス・ケイジは可哀想な役だ。誰しも持つ程度の欠点を持つ、「こういう人いるよな」と思えるような平凡な男なのだ。しかし、脚光を浴びてしまったことによって、その欠点が何倍にも膨れ上がり、ついには感情的な行動から最悪の結果になってしまう。

 よく悪夢をみる私からすると、この映画こそ悪夢の再現に思えた。自分の力でコントロールできない事態が起きる、自分の欠点が露見する、周りの人に愛想を尽かされる、と悪夢によく出てくるシーンが詰め込まれていた。

 人はなぜ夢を見るのか。色々な説があるし、答えは出ていない問題だが、私は「不安の先取り」だと思っている。不安な出来事を先に夢が見せることで、安心感を感じられるようにするのだろう。

 ホラー映画が人気なのも、この不安の先取りの要素があるように思う。現実で抱えているモヤモヤをホラー映画が先取りしてスッキリする。そんな効果があるように思う。ホラー映画にもさまざまな種類があるが、人は自分の抱えている不安が具体化した映画が好きになる傾向があるのではないか、とも考えている。そういう意味で、「ドリームシナリオ」は私にとって好ましい映画だった。

 「ドリームシナリオ」が好きな人は、自分のことも他人のこともうっすら嫌い、怖いと思っていて、自分の欠点が露見することで人に裏切られたり、人に嫌われたりすることを恐怖に感じている人だと思う。そして、その不安を映画という形で先取りすることでほっとするに違いない。「これが現実でなくて良かった」と。

 「ドリームシナリオ」のいいところは、不安の具体化だけではない。最悪の出来事が起きた後の日常を描いているところだ。どんな最悪の出来事にも続きがある。悪夢は日々を過ごすうちに日常になる。不安に直面させ、「でも意外と大丈夫だったでしょ?」というような結末まで含めて、夢の中のような映画だった。私と同じような不安がある人は、ぜひ「ドリームシナリオ」を観て欲しい。

 あなたはどんなホラー映画が好きだろうか。自分がどんな映画が好きか考えるところから、自分の抱えている不安について考えてみるのも面白いかもしれない。ぜひ、考えたことを共有してくれると嬉しい。